高松市 サンポートホール高松にて開催された第48回中四国矯正歯科学会大会において、下記の 発表を行った。
演題: レイサム装置による顎術前矯正の2治験
Two case reports of presurgical orthopedic treatment with Latham appliance
演者: 岡健治1)
共同演者 村松裕之2) 小林一夫3)
所属: 1)岡矯正歯科(愛媛)
2)医療法人社団普和会市川矯正歯科医院(東京)
3)愛媛県立中央病院形成外科(愛媛)
【目的】Latham装置(Latham R.A;1980)は口唇口蓋裂患者の術前顎矯正治療に用いられる.今回,両側完全唇顎裂ならびに両側完全唇顎口蓋裂症例を本装置のうちECPR装置(elastic chain premaxillary repositioning)を適用することによって良好な結果を得たので報告する.
【第一症例】生後8日,女児,両側完全唇顎裂:上顎両セグメント間幅径は7.5mm,それに対し中間顎の幅径は13.0mmであり,拡大なしに前方から中間顎に力を加えても両セグメント間に押し込むことは不可能である.したがって,pin retention systemを有する本装置が第一選択肢とされた.本症例はvomerが充分に露出していないため,premaxillary pinによる牽引が不可能なため,代わりに中間顎をレジンにて被覆,anterior armが拡がるにしたがい,エラスティックチェーンが緩徐に中間顎を整位させる機構を採用した.生後3.5カ月時に全麻下にて本装置を装着,口腔からの授乳が確認された後,通院にてスクリューの回転(0.5mm拡大/日)と衛生面での確認を行う.40日後に装置を除去した.生後7カ月時に唇裂閉鎖手術を行った.
【第二症例】女児,両側完全唇顎口蓋裂,中間顎は上顎に対し16mm前方へ突出し,右側に捻転しやや左側へ偏位していた.哺乳障害と舌の裂隙への陥入を防ぐため,生後4日よりHotz床を使用,生後3.5カ月に本装置を全麻下にて装着した.中間顎は前歯歯胚とvomero-premaxillary suture間にpremaxillary pinを挿入し,エラスティックチェーンにて牽引した.7日〜10日毎に来院させ,牽引力が片側60〜90gmとなるよう調整した.装着後69日で装置の除去と同時に,唇裂閉鎖手術を行った.
【結果】第一症例における両側セグメント間距離は5.0mmの側方拡大がなされ,第二症例では10.0mmの中間顎の後退が認められた.
【結論】本装置は両側完全唇顎裂,ならびに唇顎口蓋裂患者の上顎セグメントの拡大,突出した中間顎の整位に有効な装置であることが示唆された.

本発表に対し貴重なコメントを下さった徳島大学矯正学教室 金子和之先生