2008年3月29日掲載
乳歯の前歯のすき間は生理的なもの、永久歯萌出後のすき間は診査が必要
乳歯列の前歯のすき間
お問い合わせの5歳ころの乳歯の歯並びでは、すき間が目立つことが多いのです。この前歯のすき間を顎の発育と関係のある空隙ということから「発育空隙」と呼び、生理的な空隙の一つとされています。乳歯列完成期には既に存在する場合と、終始存在しない場合とがあり様々で、顎の大きさと歯の大きさの差により生ずるものと考えられています。一度形成された歯の大きさは変化しませんが、顎は発育により大きくなります。
また、上顎の二番目と三番目の歯の間,下顎では三番目と四番目の歯の間に存在するすき間のことを霊長目動物では顕著に見られるため、霊長空隙と呼びます(図1)。
Baumeはこの空隙の成因を遺伝的に決定されたものとしています。これらの空隙のある乳歯咬合は永久歯咬合の成立に良い影響を与えていると言われています。
永久歯に萌え変わる途中の生理的なすき間
永久歯の前歯が萌えてくる時、わずかにハの字に傾斜し、
にいくぶんの空隙を生じて萌えます。この時期のこの現象を含め「みにくいアヒルの子の時代」と呼びますが、二番目の歯が一番目の歯を押しながら萌出してくるため、すき間は減少し、さらに犬歯が歯列に加わる時期になると完全に閉塞されます(図2)。したがって、この場合も矯正治療の必要性はありません。
診査の必要なすき間
しかし、歯と骨の大きさの不調和や、真ん中の歯の突出がある場合はその隣の歯が萌えて来ようとする力が一番目の歯に加わらず自然に閉じることはありません(図3)。
また、上唇をめくると誰しも歯ぐきと唇との間に細い紐のような帯が目に入ります。ただ、その帯がかなり歯に近いところまで下がっていることもあり、「上唇小帯の付着異常」とよび、帯をはさんで歯と歯が開く原因となります。以前は早期に切除することが多かったようですが、現在は両側の二番目の歯が完全に萌出して、それでも隙間がとじないようであればこの上唇小帯を外科的に切除します。
さらに、「過剰歯」といって本来の歯とは別に余分な歯が存在することがあります。過剰歯を抜歯した後、二番目の歯が萌える余地がないことが多く、矯正治療によってすき間を閉じる必要があります(図4)。
このように、歯列の時期や、すき間のできる原因によって対処の仕方が違います。いずれにしても、かかりつけの歯医者さんにご相談されることを御勧めします。